事務所通信

相続税・事業承継

ここでは「はらの税理士事務所」にて二ヶ月に一度発行している「はらの事務所通信」のほんの一部をご紹介しております。お役に立てれば幸いです。(発行時の法令に基づいた内容です。ご確認の上、ご活用ください。)

本当にいいの? 事業承継税制。 (H20年8月号)

昨年の12月号に簡単にご紹介しました“事業承継税制”に関する続報です。「非上場株式の相続税の優遇措置」に関するものでしたが、平成21年の税制改正内容のため実はまだ詳細は決まっていません。まだ決まってもいない事にあれやこれやと書くのはどうかと思いますが、新聞などでもこれに関する記事をよく目するようになり、非常に注目されているようなので、ここでも簡単にご紹介したいと思います。

内容は次の要件を満たせば相続税の計算の際に非上場の法人株式の評価を8割減にできるというものです。

《要件》

経済産業大臣の認定が必要(会社、後継者等について)
申告期限から5年後に次の点をクリアーすること

  • 引き続き代表者であること
  • 雇用の8割以上を維持すること
  • 株式を継続して保有すること

どうでしょうか?達成もそう難しくはなさそうで、なかなか良い制度に思えます。しかし、問題はここからです。あくまでも“納税の猶予”であることです。免除ではありません、猶予です。つまり“いつかは払わないといけない”というのが原則です。ただ、ひとつだけ免除になる方法があります。それは、“後継者が死ぬまで株式を持っていた場合”です。

例えば、父が亡くなり5億円の評価額の株式を息子が相続したとします。この制度を利用して相続税が2億円安くなったと仮定しましょう。そして、この息子が死ぬまでこの株式を持っていれば、その2億円は免除されます。しかし、息子の代になるとなかなか経営もうまくいかず、相続から20年後に他人に会社の株式を売却したとしましょう。そうすると売却した時点で、安くなっていた2億円の相続税を納める事になります。倒産寸前で株式の売値が1000万円だとしても・・・。そして、恐ろしいのはここからです。この安くなっていた相続税にプラス“利子税”を納める必要があります。この低金利時代でも4%〜5%の利息をとります。20年もたてば、利子税だけで2億円程度までなるでしょう。中小企業では1年先も読めないのに何十年も先のことまで考えてこんな制度を選べるでしょうか?このままでは、ほとんどの会社は使えないでしょう。改善されていくことを期待したいものです。